はれ ときどき てつがく。

ちいさな「てつがくする」をさがして

食べログに載らない「何か」:マイク・モラスキー「日本の居酒屋文化」

今日取り上げるのは、こちらの本です。

日本の居酒屋文化 赤提灯の魅力を探る (光文社新書)

 「サードプレイス」という言葉があります。家(第一の場)でも職場(第二の場)でもない、その人にとって居心地のいい「第三の場」のことを指します。本書は日本のサードプレイスの代表(?)でもある居酒屋文化を取り上げた本です。

 著者のマイク・モラスキーさんは「サードプレイス」という言葉を世の中に広めるきっかけになったオルデンバーグの同名書(日本語版)の中でも書評を寄せています。

 さて、著者が取り上げるのは日本の居酒屋の中でも特に「赤提灯」とよばれる店です。敷居の高くない、昔ながらの呑み屋ですね。「赤提灯」のイメージがわかない人はこの写真↓を見るとわかりやすいと思います。

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著者はオルデンバーグの「サードプレイス」を参照し、第三の場の特徴として、例えば「ひとりで行ってもひとりでない感じがする」「消費者ではなく個人として扱われる」ということをあげています。そして著者が飲み歩いた数々の赤提灯の中から、このような特徴に当てはまるような店の紹介をしています。全国の店が紹介されており、この調査量(飲み歩き量)は圧巻です。読んでいると飲みに行きたくなります(笑)

面白かったのは立ち飲み屋や大衆酒場の話。これらの店では一人一人の座るスペースが少なくて、客が多くなると席を詰めたりする必要があります。なかには「おしぼり」を客同士で共有したりする店もあります。このような店では「私有」できる部分が少ないものの、逆に様々なもの(席、おしぼり…)を「共有」することで客同士が仲良くなれるような環境ができる、と著者は指摘します。自分の経験でも確かにそうなのかな、と思いました。

さて、著者は居酒屋選びの5つの要素として、「品」「値」「地の味わい」「場の味わい」「人」をあげていますが、本書で紹介されている多くは「穴場」的な店です。地元に密着したローカルな店ほど「第三の場」として機能していることが多い、ということなのだと思います。一方で、有名店になるとお店を「観光」的に訪れる人が増え、お店の雰囲気が壊れてしまう、ということも筆者は嘆いています。あらゆるお店の情報が「食べログ」やその他のネット媒体に捕捉されてしまう世の中で、「地元にしか知られていない」穴場は消失しつつある、とも。

本書で紹介されるお店はメニューや値段、住所についてはあまり触れられていません。メニューや値段、住所はネットを見ればすぐにわかるので、ネットではわからないお店の様子の紹介に重点が置かれています。これは「食べログ」時代に対する著者のささやかな抵抗なのだと思いました。

著者は自分で穴場の居酒屋を見つけるときにどのように探せばいいか、ということも書いています。以下の4か条ですので参考に引いておきます。

1.まず、我を知れ…自分の好み、どのよう場所に引かれるかを把握する

2.街に注目せよ…街と店の関係を知る。練習として知らない街の飲食街を歩くとき、次の角を曲がったらどんな店があるのか想像する。そしてなぜそう考えたか振り返るとよい。

3.表通りより裏通りへ…開発されていない裏通りの方が穴場が多い

4.外見を「パーツ別」に捉えよ…外観と入口、看板と提灯、のれん。店の前の自転車や鉢植え、漏れ聞こえてくる声など。

たまには自分の勘だけを頼りに「居酒屋探訪」してみてもいいかも? 

(おわり)