ICPIC体験記その4;メインカンファレンス3日目&ポストカンファレンス

ICPIC3日目とポストカンファレンスの振り返りです。過去の記事はこちらから。

Keynote3

運営企画シンポジウム:哲学教育とマスメディアの役割

基調講演 - ICPIC Tokyo

この日、午前中はオンラインで視聴。メディアと哲学教育の関係がテーマということで、これまでとは少し趣向が異なりメディア関係者の視点での話が聞けたことは新鮮だった。

この時間でなんといっても印象に残っているのは『Q〜子どものための哲学』についてのフロアからの質問で、なぜぬいぐるみのキャラに年配の男性の声が、子どものキャラに大人の女性の声が当てられているのかということだった。メディアやそれに影響された私たちのバイアスが炙り出されたようで痛快ですらあった。

Session 9:RoomA

午後からは会場に移動して現地参加。興味深い発表が集まっていた部屋に参加。参加者はかなり多かったように思う。

タイトル:Understanding ‘gated’ communities of inquiry
発表者:Florian Franken Figueiredo (Nova University Lisbon)

Darren Chettyの論文「Racism as ‘Reasonableness’: Philosophy for Children and The Gated Community of Inquiry」を下敷きにした発表。内容にはとても関心があったのだが、ほとんど口頭での説明で内容も専門的だったため、あまり理解できなかったのが正直なところ。まずは元の論文を読むところから始めたい。

タイトル:Voting on the questions in a Community of Philosophical Enquiry:
Age as a category of exclusion in classrooms and the world
発表者:Rose-Anne Reynolds (University of Cape Town)

南アフリカケープタウンでの実践の話で、問いへの投票という馴染み深いテーマだったためとっつきやすかった。対話の問いをどのように決めるか、というプロセスがすでに一つの民主的実践でもあるという視点に共感するが、単純に票が多かった問いに決めればいいのかという検討もやはり必要だと感じた。(後日開催された日本哲学ラクティス学会シンポジウムでも似た話で「多様決」が紹介されていた。)

www.cultibase.jp

タイトル:what are we missing? epistemic injustices, voices from/for the present
and not from/for the future

発表者:Tiago Almeida (Lisbon School of Education); Carla Gomes (NICA: University of the Azores; Oceans-On)

こどもの声に真に耳を傾ける(listen)ことはどのようなことなのか、こどもを未成熟な存在と見做したり、大人と同様の尺度(こどもも大人と同じ能力がある)で認識することの問題点についての発表。認識論的不正義の観点を踏まえ、こどもが声(必ずしも大人が認識する言葉ではない)をあげる瞬間に焦点を当てた発表となっており興味深かった。(余談だが、この発表者の方とはとにかく参加したプログラムが被りまくっていて一番印象に残っている)

Session10:Room G

タイトル:“PHILOPOLIS: building a philosophical city”
発表者:Paulina Baños Lerin

ちょっと変わったワークショップに出てみたいと思いこちらの部屋を選んだところ、なんと会場には私しかいなかった…オンラインには数名の参加者がいたのだが。日本人の参加者は私しかいなかったので、少し詳しめにレポートする。

内容は「もしp4cの理念が全体に行き渡ったら、どのような都市になるだろうか?」を考えるもの。「環境、経済、行政、教育、健康」という、都市生活に関わる5つの観点から一つをチームで選び、その観点でp4cの理念が浸透した都市がどのような姿になっているかを考え、レゴブロックや人形、絵などで表現してみるというものだった。p4cと経済の関係などはあまり考えたことがなく興味深かったが、今回はロシアからの参加者の希望で「教育」の観点が選ばれた。

教育という観点から見たときに、どのような都市になるだろうかということをディスカッションする。学校は存在せず、街のあらゆる場が教育の場になっているのではないだろうか。病院の待合室でも、電車の中でも…。でもあらゆる場が対話の場になっているのではなく、一人で考える時間も欲しい…などなど、色々と空想をして、今回は最後に各自が思い思いの都市の姿を表現してみることになった。

私は都市が円形になっていて、中心に広場(アゴラ)があるような姿になるのではと思い絵に描いてみた。他の参加者はウサギの人形を並べてストーリーを熱弁していたりしていてとても面白かった。

やまもと画伯の描いた都市

Session11:Room B

タイトル:地方創生における P4C の実践と貢献可能性を考える
発表者:得居千照(筑波大学大学院)、柳瀬寛夫(株式会社 岡田新一設計事務所)、熊谷英樹(気仙沼図書館
元館長)、関戸塩 (琉球新報社)、河野哲也(立教大学)

最後の時間帯は日本語のプログラムに参加。哲学対話と地方創生についての実践報告を聞く。地方で活動するひとりとして、それぞれの報告を興味深く聞いた。

この発表でICPICのメインプログラムは全て終了。終了後も久しぶりに会う人と話したり食事に行くなどした。

ポストカンファレンス

翌日のポストカンファレンスは”Philosophy with Children and Teacher Education” (edited by Arie Kizel, forthcoming in Routledge, October 2022)の各章について、著者たちが発表するというものだった。一応接続していたが流し聞きだったので内容は割愛。

おわりに

ということでICPICの全日程が終了した。海外の実践、特にスペイン・ポルトガル語圏の実践の様子や考えの片鱗を知れたのがとても大きな収穫だった。次回ICPICはドイツ開催ということで、オンライン参加も可能になるかもしれないのでチェックしておきたい。