日々の断想(11/15〜11/21)

すっかり寒くなりましたね。まだ部屋では暖房をつけずに頑張っています。

「クッキークリッカー」から学んだこと

「カレーのパースペクティブ」という、カレーと人間を哲学的に考える謎のプロジェクトがある。現在、年1回ペースで同人誌「カレーZINE」を発行している。

今回vol.3と並行して「カレーを題材にしたゲーム」を作ろうと計画しており、先週も打ち合わせをした、「カレーが人間を利用して増えていく(繁殖していく)面白さを表現できないか」ということで(何を言っているのかわからないかもしれないが)、参考として「クッキークリッカー」というゲームをプレイしてみる。以前からある有名なゲームのようだが知らなかった。

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ゲームとしてはシンプルで、クッキーをクリックしてひたすら枚数を増やしていくというもの。クッキーの枚数が増えるとクリックを自動化してくれる「カーソル」や、クッキーを焼いてくれる「グランマ」、クッキーを自動生産する「工場」などが購入でき、加速的に生産効率が上がっていく。

増えていくクッキーを眺めるのは面白いのだが、そのうちなんとも言えない虚無感というか、空恐ろしさのようなものを感じてきて、自分たちのやりたいこととは少し違うよね、という話になった。カレーが増えていく面白さというのは多分もっと別のところにあるのだ。このことがわかったのは収穫だった。

それにしてもこのクッキークリッカーというゲーム、随所にブラックユーモアが効いておりアイロニカルだ。クッキーが増えていくやり方は現代の大量生産体制そのものであり、クッキーが資本の比喩でないかと思わせる表現もところどころにある。昨今SDGsを学ぶためのゲームがたくさん開発されているが、これを遊んで感想を語り合う方がよっぽどいいのではと思ってしまった。

ちなみに日本で1年で生産されているクッキーの量を調べてみたところ、ビスケットとしては年間25万トン程度が生産されているようだ。ビスケット1枚は10g前後のものが多いので、日本だけで年間250億枚前後のビスケットが生産されていることになる。ゲームにでてくるクッキーの枚数は天文学的数値に思えるが、実際はそうでもないのかもしれない。

※「ビスケット」は元々クッキーを含む焼き菓子一般を指すが(上記リンクでも同様)日本では糖分と脂肪分の割合で表記が変えられているらしい。

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滋賀・高島での哲学対話

依頼をいただき、滋賀県の高島で久々で対面での哲学対話を行う。コミュニティボールを使うのも本当に久しぶりで、みなさんが触ることに抵抗ないかも気にしながら進めていった。

内容はとりあえず伏せておくが、今回は他の目的があり集まった方に向けての対話だった。どのように進めれば哲学対話の良さがいかせて、かつ本来の目的にも合う形に着地できるかを考えながら流れを作っていった。ドイツの哲学プラクティショナー協会の綱領では、自分が実践者としてなぜその行動を取るのか、その理由を言語化していく重要性について触れられているらしい。そのことも思い出しつつ、オーダーメイドで内容を考えていくことの楽しさと重要性を改めて感じた経験だった。

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今回は「汝自身を知れ」という言葉がふさわしい場だなと思ったのでフリップを作成。真理の探究と自己を見つめることが密接に結びついているということがわかって、ベタながらいい言葉だなと最近思う。

今週読んだ本

遅ればせながら読んだ。エッセイとして素晴らしい本だと思う。哲学対話に参加したことないという人の感想もSNSでちょくちょく見かけるが、それだけ筆者の文章は多くの人に響くのだろう。自分はどのように哲学対話の風景を見ているのだろう、と思いを馳せる機会にもなった。

特権やインターセクショナリティなど多くの概念が紹介されていて、かつ実例を交えてわかりやすく、とても学びの深い本だった。マジョリティ属性を多く持つ人が差別のことを考える際にとても役立つ一冊だと思う。

(おわり)